■明治生命館 東京の建築遺産50選
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皇居のお堀に面して堂々と建つ、日本における様式建築の最高峰ともいわれるこのオフィスビルは、様式の名手・岡田信一郎の代表作である。外観は、1階の石積み壁の部分を基壇とし、2階以上をコリント式大オーダーの列柱、最上階2層を壁で仕上げるという、古典主義建築の定石である三層構成を踏襲した比例構成をもつ。また、建物内外の細部装飾まで丁寧につくられており、建物の魅力を一層高めている。モダニズム建築の萌芽期である昭和初頭においても、一方でこうしたクラシカルなスタイルが、企業の安定性・永続性の象徴として、需要を獲得していたのである。
巧みな意匠に加えて、構造や設備の充実も興味深い。構造設計は日本における耐震構造技術の先駆者、内藤多仲が担当。設備計画にあたっては、岡田が事務所の所員をアメリカに派遣し、保険会社の建物と設備を調査させるなどして、最先端のものを採用している。
明治以来の目標であった、様式建築の習得が成熟してきたのは、昭和初期であるが、中でも岡田は、多様な様式を、自家薬籠中のものとして使いこなす力量において群を抜いていた。
若くして、並みいる諸先輩を抑えて勝ち取った大阪市公会堂コンペ、華麗な桃山風の意匠をもって仕上げた和風コンクリート造の歌舞伎座など、西洋の様式から和風意匠をもつ建築まで、自由に様式を操る岡田の能力と、その守備範囲の広さには驚かされる。まして岡田が、生来の病弱で、海外旅行体験が一度もないと知ればなおさらだろう。その才気を開花させたのは、機知縦横といわれた、彼の稀有な勤勉さと歴史に対する研究熱であった。
この建物は、完成を待たず逝った岡田の遺作となったが、彼の遺志をついで、岡田信一郎の弟・捷五郎が竣工させている。重要文化財。


建築年: 1934年(昭和9)
設計者: 岡田信一郎
管  理:  
施工者: 竹中工務店
面  積: 延床面積:31,628m2
構  造: 鉄骨鉄筋コンクリート造
規  模: 地下2階・地上8階
所在地: 千代田区丸の内2-1-1