わが国に近代洋風建築が根付いてから、1世紀以上の時が過ぎた。明治政府は多くのお雇い外国人技師を招聘して各分野で近代化を図ったが、中でも、イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの招聘は、その後のわが国の建築の発展過程をみるとき、彼の存在を抜きにして語ることができない。 20世紀は「機械の時代」ともいわれるが、世界的にみて建築における技術の進歩と近代化は、瞠目するものがある。
 明治以降、建築が国家建設に果たした役割は、計りしれないものがあり、不幸な戦争を経験したとはいえ、今やわが国の建築は、デザインは言うに及ばず、建築技術においても世界の建築界をリードするまでに至っている。しかし一方で、過去多くの名建築を消滅させてきたのも事実である。
 ここでは、20世紀のわが国の建築のあり様を問うとともに、東京の建築を通して、次代に遺したい建築、次代に受け継ぎたい建築を50件選定した。あえて「建築遺産」と題したのは、こういった意味合いを含んでいることをご理解いただきたい。なお、選定にあたっては情報委員諸氏の意見のもとに決定した。
(情報委員長・小黒利昭)